敵は次々と攻めてきた。
は落ち着いた様子で敵を倒す。

「悟天と比べたらてめえら、綿が落ちてくるくらい遅いな」

はくすくすと笑いながら言う。挑発しているかのように。

「一人一人なんて面倒だ。まとめてこいよ」

「ちっ!!てめえら何一人に手間取ってやがんだ!!殺せっ!!」

敵は冷静さをどんどん失って、攻撃の仕方がお粗末になってきた。
すると、悟天がいきなりに話しかけてきた。

!ごめんっ!ちょっと俺、行って来たいところがあるんだけど、いいかな?」

「えっ?どこに行ってくるの?」

「そ、それは言えないけどすぐ帰ってくるから!!」

「(・・・見ていてくれないの・・・?)」

はそう言おうとしたが、ぐっとこらえて、笑顔でうなずいた。
悟天を見送ってから、はまた、敵を倒していった。機嫌が悪くなったのは言うまでもない。

「・・・そこのお前」

が一人の男を指差す。親玉のようだ。

「周り見てみろ。残ってんのお前だけだよ」

「なっ・・・・!!」

気づけば、親玉以外の全員が血だらけで死んでいる。

「てめえには聞きたいことが腐るほどある。すぐには殺さない。」

「なめんな女ァァーーー!!」

走ってきた男をは鎖で巻きつけ地面に叩きつけた。

「あせんなよ。まず、前に小さな村を襲ったことがあるだろう?」

「へっ・・・!!小せぇ村なんか襲いすぎて何処のことだかわからないぜ・・・!!」

は思いっきり男の腕を踏みつけた。

「痛ぅ・・・!!」

「お前・・・、これ以上私を怒らすなよ・・・。
老若男女関係なしに殺しまくりやがって・・・!!」

「はっ!老若男女ォ?てめえなにいってやがる。人間なんだから殺す楽しみは
一緒じゃ・・・・・」

男の腕から鈍い音がした。腕も変な方向に曲がっている。・・・骨が折れた。
の顔が異常なくらい静かだった。そして、静かに笑った。

「そうかい。じゃあてめえに”殺される苦しみ”味わってもらうぜ。」

「痛って・・・!!まっ待て!!な・・・仲間になってやるよ!!なんでも言うこと聞いてやるっ!!」

「じゃあ死ね」







 
                        







                          ぐしゃ・・・・・っ













血の雨が降った。
先程までの光景は、一瞬にして消えた。
の体に、サバイバルナイフの様なものが突き刺さった。
背後には、にナイフを突き刺した、岩陰に隠れていたと見られる敵の姿があった。

「な・・・・・に・・・・?」

は傷を抑えながら気を失い、鎖で縛っていた親玉に倒れ掛かった。

「・・・はっ!馬鹿が!俺にばっかり気をとられて、油断しやがった!!」

親玉はの髪をつかみ、自分の顔の高さまで持ち上げた。

「てめえは何度もなめた真似をしてくれたからな。特別に派手に殺してやるよ。」

親玉は、の背中から刺さっているナイフを前後左右にえぐり始めた。
は、あまりの痛さに目が覚めた。

「う・・・・・ああああ・・・っ!!」

「そら、もっと叫べよ」

「(ち・・・っ!・・・。悪い。私やっぱり弱いや・・・。そっちいったら
お詫びするから、だから、ごめん。・・・)」



                       の思考はそこで途切れた。





                             救い







―――――――ここはどこだ?

はとてつもなくでかい門の前に来ていた。
周りには、ちょうどがさっき倒したと見られる男達と同じくらいの数の”うようよ”が
鬼の様なものに門の中へと案内されていた。
は橋のようなものに立っている。下は・・・、恐らく雲だ。
は近くの鬼に、聞いてみることにした。

「ここ、どこですか?いつ私ここにきましたか?」

すると、鬼は、が耳を疑うようなことを言い出した。

「あなたがここにいるって事は、あなたはもう死んだんだオニ。ほら、頭の上を見てみるオニ。」

は恐る恐る上を見上げた。すると、輪のようなものがの頭に浮かんでいた。

「私・・・死んだのか」

はそううっすら呟き、小さな笑みを、しかしとても悲しい笑みをしながら門の中へと入っていった。
気のせいか、空が曇り始めた気がした。










                            救い


その頃悟天は、信じられない光景を目にしていた。の背中にナイフが刺さり、
その上えぐられた傷から、血がぽたぽたと流れ出ている。顔は以前の血色のよかったとは裏腹に、
青白くなっていた。どう見ても、生きている風には見えない。
敵は既に、遠くへ逃げてしまったようだった。

・・・・?」

悟天はと視点があわないまま前へふらふらと歩いていった。
は、体全体が薄くなり、少しずつ見えなくなっていった。

!?嘘だろうっ!?があんな奴らに負けるわけ・・・!!」

悟天はの名前を呼び続けた。もうの姿はなくなった。
悟天の後ろには、泣く女の子の姿があった。




  


                            救い


は閻魔らしきオニの目の前にいた。

「ふむふむ・・・。お前はあの凶悪犯に殺された・・・というわけか。
残念だったな・・・。」

「なあ、閻魔さん。ここに、って女の子いるかな。」

?ああ、いるぞいるぞ。だが、ちょっと今日はある男の頼みで、特別に下界へいっとる。」

「(男・・・。ももう、そんな歳なのかな。)そ・・・ですか。」

はがっくり肩をおとした。

「・・・そういえば、体の傷が治ってる・・・。」

「ああ。お前は魂だからな。本体のほうも一応回収しておいたが。」

「・・・?」

は何のことだかわからなかった。

「悟天・・・・。あんたに会いたいよ・・・」

閻魔はその言葉に驚いたように言った。

「なんだ。お前、悟天の知り合いか」

「(今の聞こえたのかよ。ってか、悟天知ってんのかよ)はあ、まあ。・・・・っ。
悟天に別れも言わないでこっちに来ちゃったんだ、私・・・・・・」

はそう言うと、自然に涙がこぼれた。
閻魔は何を悟ったのか、いきなりに問いただした。

「恋人か?」

あまりにも率直な問いには一瞬呆けた。

「・・・んなことないよ」

「ほう。そうか・・・くっくっく」

「・・・っ!なにがおかしい?」

「くく・・・まあ、そう怒るな。どうだ?場合によっては、お前を下界へ戻してやらんでもないぞ?」

「な・・・っ!?本当か!?も、戻してください!今すぐにでも!」

「ただし、条件がある」

「条件?そうか・・・。さすが閻魔さんだよな。いいよ。舌でも、足でも、手でも、目でも・・・なんでもくれてやる。
だから私を悟天に会わせてくれ。少し話をするくらいでいいんだ。あと・・・」

「おいおい。勝手に妄想を膨らますんじゃない。怖い娘だな・・・。
どうやら見たところによるとお前さん、下界に随分とやり残したことがあるようではないか。」

「ああ。そりゃもう腐るほどな。」

「・・・だろうな。あのという娘への誓いも成し遂げられないまま死んでしまったのだろう?」

「何で知っているんだ?」

「そう睨むな。わしは閻魔だ。下界なんぞ丸見えだ。お前らの会話もな」

「ふ・・・ん。じゃあ、私が下界にどうしても戻りたいっていう気持ちがわかるだろう?だから、どうしても行きたい」

「そのための条件だ。・・・いや。条件という言葉は不適切かもしれんな。まあ。いいのだが。
まず、お前が下界に戻れるのは、一日だ。どうあがこうとな。24時間の間に、お前がしなければならないことを
終わらせるんだ。もし間に合わなければ、ゲーム・オーバーだ。もう二度とお前は下界へ戻れない。
失敗は許されないぞ。覚悟を決めろ」

「一日・・・。オーケー。わかった」

「よし。いいのだな。では、いくぞ」


ヒュッ・・・っと音がしたかと思うと、はもうそこにはいなかった。
閻魔は、フッと笑い、”頑張れよ”と呟いた。
空が、また晴れ始めた。




                             救い



「ぅ・・・・・・・っわああああああああーーーー!!」

は上空から地面に向かって落ちている真っ最中だった。

「閻魔さーん!!こんな戻し方はねえだろぉがあーーーー!!
・・・くそっ。このままじゃ一日どころか、一瞬であの世に戻らなきゃならなくなるじゃねえか・・・!!」

(あの世  閻魔:「失敗してしまった」)

「・・・・天っ」

は精一杯叫んだ。


                         ――――悟天っ――――




地上すれすれのところで体が安定した気がした。
の目の前には、見慣れた顔。黒い髪で、少しおどけた感じのする
悟天が、笑いかけていた。

「呼んだ?」

「悟・・・天」

「心配、したよ。行くんだろ?復讐?」

「えっ・・・うん、行く!」

のその言葉を合図に、悟天はヒュッ高く空へと飛んだ。



「うん?」




「おかえり」




                             救い




は、今度は2人しかいない敵の前に再び立った。
敵は、驚きを隠せない様子で手に持っていたビールジョッキを床に落とした。
中に入っていたビールが、の足のほうまで流れてきた。

「よう」

「な・・・なんでてめぇ、生きているんだ!?」

「お前らなんかに絶対負けない。仲間の、為にも」

はそう言うと、鎖を取り出した。

「死に底ないが・・・っ!」

子分の方がナイフを振り上げてきた。
しかし、そのナイフはの眼前で止まった。いや、止められた。
は、呆然とした。

「お前は、俺が相手するよ」

そう言ったのは、悟天だった。

は一人で大丈夫って言ってたけど、俺が一緒に戦いたい。
ずっと、一緒に」

の方を向いてそう言っている悟天に、ナイフが振り下ろされた。
悟天は素早く向き直り、敵の子分の腹部に手をあて、吹っ飛ばした。

「悟天・・・・」

「ほらっ!仇を討つんでしょ?」

「ん・・・頼んだぜっ!」

「了解っ♪」

は、悟天と初めて出会った場面を思い浮かべた。


悟天。あんた。やっぱり強いよ。
悟天。あんた。とぼけた顔して、しっかりしてるのね。
悟天。あんた。こんな私に声、かけてくれたね。
悟天。あんた。私を、暗闇から出してくれたね。
悟天。あんた。私を、必死に守ってくれたね。

悟天。あんたのこと、大好きだよ。



親玉が迫ってきた。手には、ビールの瓶を叩き割ったものが握られていた。






「私、絶対負けない」







                            救い




「あっ。見て。悟天!夕焼け、綺麗・・・」

「あ〜!本当だ〜!」

「・・・・終わったね。全部」

二人は、川原に来ていた。

「・・・

「うん?」

「何で、”今まで男だった”の?」

「えっ。・・・・・いいの。それはもう。
私は生まれ変わる。これから」

「そっか」

爽やかな風が吹いた。とても、心地よい風。
今までの苦しみを洗い流してくれるような・・・。

「そうだ。に会わせたい子がいるんだ。」

「誰?」

「ほらっ!おいでよっ!」

悟天が後ろにある、建物の方に叫んだ。
そこから顔を出したのは―――――


「・・・・お姉ちゃん」

・・・っ!」

これでは全て了解した。あの世で聞かされた話は、
悟天がを下界に連れて来た、ということだったのを。

っ!っ!」

を抱きしめた。小さな、小さな女の子を。
は涙を流しながら、微笑んだ。

「お姉ちゃん。ありがとう。仇をとってくれて・・・」

は何度も頷いた。

「みんな、喜んでるよ」

・・・。ごめんね・・・」

「お姉ちゃん。大好き・・・」

は、涙が止まらなかった。ずっとを抱きしめていた。

「私ね、お姉ちゃんの事、心配してた。あの日から、
お姉ちゃん別人みたいになって・・・。だけど、悟天お兄ちゃんと会えて
お姉ちゃんまた変われたね。よかった」

「うん。うん・・・。」

「いつ・・・までも、二人仲良し・・・でいて・・・ね」

「!??」

「大好・・・き。お姉ちゃ・・・ん。大好・・・」

はすっと消えた。
はただ呆然とするしかなかった。

。閻魔様は、24時間下界にいられるって言ったけど、
実際、ちゃんみたいな女の子には、6時間位しか耐えられないんだ。
魂に負担がありすぎて・・・」

「・・・・・そう・・・。」

は空を見上げた。少し微笑んで。

。私頑張るよ」

悟天も、微笑んだようだった。

「悟天」

「ん?」

「敵討ちが終わったら、言いたい事あるって言ったでしょ?」

「あっ、うん」

「私、悟天の事大好き。」

・・・」

「私も、またあの世に戻らなくちゃならないから、今言っておきたい」

「・・・・・あっ!」

悟天が、いきなりの頭の上を指差した。
今まで、全然気がつかなかった、あの世の輪が消えたのだ。

「えっ?どうして・・・」

すると、空から声が聞こえてきた。

「ワシじゃ。閻魔だ。・・・ったく。さすがお前らの仲間だけのことはあるな。
という娘が、勝手にの書類に生き返る判を押しよった。本当なら、速地獄行きだが
今回だけは・・・許してやる!閻魔がこんなことしてはいけないのだが
と、特別に・・・だ!」


「閻魔様あっ!」

悟天が飛び上がった。
も喜びのあまり、そこらを走り回った。

「じゃあなっ!の分、しっかり生きてやれっ!」

「ありがとうございます!閻魔様っ!」

閻魔にお礼を言った後、悟天はの方を向いた。



「ん?・・・・っわ」

今度は悟天が、を抱きしめた。






「俺も、のこと大好き」






                                          END
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はいっ!終了!長い長い連載でした。
っていうか、私がだらだらとしているからなんですよね。ごめんなさい。
最終回、無理やり1つにまとめたら長く・・・。
ふふふふ。

久々の更新、遅くなってすみませんでした。
次は・・・、なに書こうかな。

























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